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まるで蛇のような食虫植物 ~ダーリングトニア普及計画~

こんにちは!

Thinkです(Twitterアカウント👉https://twitter.com/Think_blog_2019)

突然ですが、ダーリングトニアという食虫植物はご存じでしょうか?

アメリカに自生しているサラセニア科の植物で、学名はダーリングトニア・カリフォルニカ(Darlingtonia californica)といいます。

英語だと「cobra lily」や「cobra plant」と言われ、日本語だと「ランチュウソウ」と言われます。

この記事では、このダーリングトニアを栽培するにあたって私が調べたことや実験したことをまとめてみました。

あくまでも個人的な見解になりますが、今後ダーリングトニアの栽培をしてみたいと考えている方は、是非ご覧いただければと思います。(ただし枯れても保証はできません。真似される方は自己責任でお願いします。)

なお、以後の文章では「ダーリングトニア」と表記します。

また、記事中に専門的な単語が出てきますが、コチラの記事に単語の意味を記載していますので、併せてご覧いただければと思います。

①ダーリングトニアはどんな植物か?

自生地

アメリカのオレゴン州、カリフォルニア州に自生しています。

雑木林の中や山中の岩肌に生息していますが、共通するのは水が豊富にある土地という点です。

雑木林の自生地は地面まで光が届かないためか一日中気温が低いです。

対して岩肌のような場所は光を遮るものがないので気温が上昇してしまいますが、根本に冷たい水が流れています。

また土壌のpHはアルカリ性や酸性だったりと様々です。

捕虫方法

落とし穴式

見た目

葉っぱは蛇のような二股に分かれたベロを出したような形状をしていて、このベロの裏側にある穴から虫が入れるようになっています。

捕虫葉は様々な方向に向く

ダーリングトニアの捕虫葉

葉っぱの形状はサラセニア・プシタシナやサラセニア・ミノールに似ていますが、サラセニアとの大きな違いは、「ダーリングトニアは葉っぱが成長するときにねじれる」という点です。

どちらもサラセニア科の植物なので、先祖が一緒なのかもしれません。

増え方

ダーリングトニアは花を咲かせて種子を付けますので、実生で増やすことができます。

また、花のほかに地中にランナーを伸ばして増えます。

②ダーリングを栽培する上での問題点

ダーリングトニアは種子のほかにランナーでも増えるので、一見するとサラセニアよりも増えやすいように見えますが、実は日本ではあまり普及していないようです。

その理由が「暑さに弱い」と言われているからです。

自生地では気温が30℃を超えない環境だったり、気温が高くなっても根本を10℃台の水が流れていたりと、温度の上昇を抑えることができる環境になっています。

対して日本の気候を見てみると、真夏の気温が40℃を超えたり真冬に氷点下20℃になったりと、季節に応じて極端に気温が変化します。

いざ日本でダーリングトニアを栽培しようとすると冬が寒いのは大丈夫なのですが、真夏が暑すぎて枯れてしまう可能性がとても高いのです。

このことから、ダーリングトニアを栽培するためにクーラーを24時間かけっぱなしにしたり、ワインセラーに入れて冷やしたりしている方がほとんどで、なかなかコストがかかっています。

一般人の感覚として「食虫植物のためにクーラーをつけっぱなしにするのか?」となりますし、もちろん電気代もかかりますので、なかなか普及が進まないのです。

つまり、ダーリングトニアを普及させるには「暑さに強い株」もしくは「暑くても栽培できる方法」が必要なのです。

③よくわかないダーリングトニアが枯れる条件

日本の環境でダーリングトニアを栽培するにはクーラーが必要と書きましたが、実はクーラーを使ってもうまく栽培できないことがあるようです。

私も水槽クーラーを使って腰水を13℃に冷却した状態で栽培したことがありますが、それでも枯れてしまいました。

ほかの方のブログを読んだりすると、私と同じように、あるいはもっと冷やしながら栽培していても突然枯れてしまった方がいるようです。

もちろん病気などが原因で枯れてしまう可能性は十分ありますが、今まで順調に育っていたのに突然調子を崩して一瞬で枯れるという現象が散見されます。

このことから、冷やすことが根本的な解決になっていない可能性があると考えました。

④思うほど暑さに弱くないのでは?

ダーリングトニアの栽培に関して情報収集してるうちに、奇妙な現象を見つけました。

もちろん栽培環境はみんな違いますし、地域が変われば気温・湿度が変わりますので、一概に同じ検証結果として扱うことはできないことはわかっています。

子株と大人株で耐熱性が違う?

「子株の時は暑さに強くて、大人株になると暑さに弱くなる」という話を聞きました。

私のところでも真夏の炎天下の中、外に放置してみましたが確かに子株は暑い中でもぐんぐん成長していきます。

でも、他の植物だと大人株のほうが環境変化に対して頑丈な気がするのですが、ダーリングトニアだけ特殊みたいなことはあるんでしょうか?

無冷房でも栽培できた事例も

遮光して日光による発熱を抑える必要がありますが、無冷房でも栽培できた方がいたようです。

自生地では気温40℃を超えることもある

自生地でも、日本のように高温になることがあるようです。

雑木林の中の自生地はそこまで気温が上昇しませんが、開けた場所の自生地だと遮るものが無く、直射日光がガンガン当たるので気温が40℃まで上昇し、根本を流れる水も26℃くらいまで上昇しているようです。

夜間だと冷えるのかもしれませんが、熱に弱いのであれば昼間の高温だけでも徐々に弱っていき、群生できるほど成長できないと思うのです。

⑤なんのために冷却するのか?

栽培環境を整える上で、自生地のような環境を作るのが普通です。

そのため、クーラーで気温や腰水を下げてきたわけですが、そもそも何のために冷却しているのでしょうか?

私が考えている冷却する理由は、成長を抑えるためです。

本当に暑さに弱い品種は、年間を通して涼しい気候にいることが多く、おそらく昼間の気温が高くなる日が数日続くだけで弱っていき、しまいには枯れてしまうと思います。

それに対してダーリングトニアは昼間はとても暑い気候の環境にも自生していますので、単純に「暑さに弱い」とは言えないです。

ダーリングトニアを枯らしてしまった方に感想を聞いてみたところ、「夏場に枯れることもあるし、夏場は順調に成長していたのに秋口に突然枯れた」という感想がありました。

このことから、ダーリングトニアは温度が上昇しても成長が止まらずにずっと成長を続ける性質を持っていて、温度が高い状態が続くと力を使い果たして枯れてしまうのではないかと考えました。

人間でいえば常に全力疾走している状態ですので、夜は休憩しないと死んでしまいますね。

気温が40℃まで上昇する自生地では、付近に蛇紋岩が多く、水の中に植物の生長に悪影響を与える金属イオンが多く溶出しているようです。

ダーリングトニアはこういった金属イオンが多くても成長できる植物ですが、さすがにストレスになり、成長に悪影響を与えているようです。

しかし、このストレスのおかげで過度な成長が抑えられて高温でも枯れずに群生を作るほど成長しているのかもしれません。

ダーリングトニアを年中屋外で栽培するにあたって、この点が突破口になるのではないかと考えました。

⑥成長を抑えるか?成長を支えるか?

前述のとおり、冷却するとなると大がかりな設備が必要になるので冷却せずにお手軽に栽培する方法はあるのでしょうか?

そこで私は「成長を抑えるのではなく、逆に成長を支えてやることで継続的に栽培できないか?」と考えました。

つまり「過度に成長して力尽きる」というのは、過度に成長することで必要な栄養が欠乏することが原因ではないかということです。

⑦すべては根っこ

冷却せずにダーリングトニアを栽培するにあたって、どんな環境を整えればいいのでしょうか?

自生地の環境を見ると、根本を冷水が流れていれば問題なさそうでしたので、どうやら根っこを重点的に考える必要がありそうです。

ダーリングトニアの根っこ

ダーリングトニアの根っこを見てみると、地上部の大きさに比べて根っこが短いです。

サラセニアの場合、地上部が同じくらいの大きさになると根っこがもっと長く伸びます。

ちなみに子株だとほぼ根っこが無く、一本だけ伸びているかなといったレベルです。(おそらくこれが子株と大人株の耐熱性の違い)

このことと、ダーリングトニアの自生地は水が流れる場所ということを考えると

「とても水が好き」、「とても酸素が好き」ということもわかります。

例えば、暑さで成長が加速してしまうと土の中の酸素がなくなってしまい、弱体化する可能性があります。

この点を踏まえて、栽培環境を作ってみました。

⑧作ってみた環境

水が豊富で通気性が良い環境を作ろうとすると砂利系の土を使うのがいいですが、乾燥が早いので水のコントロールが難しくなりがちです。

また、窒素、リン、カリウムといった必須栄養素のコントロールが難しいのもありましたので、私は「ココヤシピート」を使うことにしました。

ココヤシピートの特徴

・水を多く含む

・細かい粒子なので通気性が良い

・原料がヤシの実なので腐りにくい

・安い

本来はミズゴケのほうがよいのですが、この記事を書いている2022年9月の時点でミズゴケの高騰が続いているのと、気温が高くて水が豊富な環境で使うので、腐りやすいことを考えてココヤシピートを使うことにしました。

ダーリングトニアを不織布ポッドにココヤシピート単用(根回りだけ購入時のミズゴケを付けた状態)で植え付け、栄養素の欠乏が無いように定期的にハイポネックス・リキダス・メネデールの希釈液を投与しました。

不織布ポッドに植え付けた様子

⑨1年目は真夏を屋外放置で耐えきれた

真夏の中、ダーリングトニアを無遮光無冷却で栽培してみました。
つまりサラセニアやハエトリソウと同じ環境です。

ダーリングトニア自体そんなに安い植物ではないので、「もったいない」とお叱りを受ける可能性もありますが、これもダーリングトニアの栽培を楽にするためです。

ご理解いただけるとありがたいです。

植え付けた直後のダーリングトニア(6月初め)

このダーリングトニアは購入時にミズゴケに植えてあり、その後根回りをミズゴケで巻いた状態でピートモスとパーライトの混合用土に植え付けていました。

さらにそのあとに実験のためココヤシピートに植えたので、短期間で2回植え替えたことになります。

ココヤシピート単用に植えるときは、いじけ防止のために根回りのミズゴケはできるだけ崩さずに植えました。

このような経緯があり、購入時についていた葉っぱは変色してしまいました・・・

そして、来る真夏。

灼熱地獄の中栽培してみました。

無遮光・無冷却なので直射日光がガンガンあたりますし、冷却もしていません。
土に温度計を挿して温度を確認しましたが、土の中の温度も30℃を超えていました。

その結果、以下のような株になりました。

真夏を乗り越えたダーリングトニア(8月末)

古い葉っぱは枯れが進みましたが、新しい葉っぱを沢山出していますし、この記事を書いている9月時点では最高気温が25℃台ですが、まだ成長が続いています。(なお、株が浮きそうだったので周りにココヤシピートを追加しました)

⑩まだまだ安心はできない

今年は真夏を無事に超えることができたわけですが、まだまだ安心できません。

これから秋口にかけて枯れるかもしれませんし、来年の春までに枯れる可能性もあります。

そして無事に来年まで残ったとしても、ちゃんと成長しないといつかは枯れてしまいます(維持ではなく成長できる状態が好ましい)。

この実験の結果がわかるのは、このまま毎年ダーリングトニアが大きくなっていき、無事に花を咲かせたときです。

まず1年目は無事に真夏を過ごすことができましたので、この記事を書きました。

⑪室内栽培でもそこまで冷やす必要がない?

私の他にもできるだけ楽な環境でダーリングトニアを栽培しようとしている方がいます。

LINEのオープンチャット「食虫植物友の会」に参加されているRyokoさんは室内でダーリングトニアを栽培されていて、極端に冷やさず人間が快適に生活できる温度で大きな株に仕上げています。

写真の掲載許可をいただきましたので、2つ掲載いたします。

大人の葉っぱがモリモリ状態です

捕虫葉が徐々に立ち上がってきました

このモリモリのダーリングトニアを栽培している環境は

・温度:20℃~27℃

・湿度:60%~80%

・水やり:腰水せず、上から水をかける

湿度はミストメーカーで加湿していますが、温度は家に取り付けているクーラーを使って管理しています。

Ryokoさんも根回りの通気性を重視して、メッシュ鉢に植え付けています。

⑫さいごに

「ダーリングトニアを栽培するにはどんどん冷やす」というよりは、「ダーリングトニアの体力と成長のバランスをとる」ことが必要なように感じてます(まだ結果がわからないですが)。

サラセニアやハエトリソウのように、日本の環境で年中屋外で栽培することができるようになれば、いつかホームセンターにダーリングトニアが並ぶ日が来るかもしれません。

その日を実現するために、いろんなことにチャレンジしていきます。